旧Sexy Zoneオーディション番組“タイプロ”からわかる、人気ジャニーズの条件【梁木みのり】
最後に、現在timeleszの中で抜群の知名度と仕事量を持つ菊池風磨は、「“自分をこう見せたい”という思いの強さ」と答えた。平たく言い換えれば、自己プロデュース能力やガッツといったものだろうか。テレビのバラエティ番組を主戦場として勝ち抜いてきたタレントらしい考え方だ。
SUPER EIGHTのメンバーでなにわ男子のプロデュースも手がける大倉忠義は、2022年8月放送のNHK「クローズアップ現代」で、アイドルが売れるためには「個性を打ち出す」ことが大事だと発言していた。菊池の回答ともかなり重なるところがありそうだ。
テレビの全盛とともにあった旧ジャニーズ事務所。数々の俳優アイドルをはじめ、元SMAP中居正広やSUPER EIGHT村上信五のツッコミ・進行スキル、Kis-My-Ft2宮田俊哉やSnow Man佐久間大介のオタクキャラなど、歌やダンスにはとどまらない、一見アイドル業には関係なさそうな才能や個性が、個人個人の大きな躍進を生んできた。
旧ジャニーズアイドルにおける成長は、K-POPのようにステージスキルを磨くことだけにとどまらず、「自分はこういう人間だ」と示せるようになる自己実現が中心にありそうだ。人間力を成長させる仕事とも言えるかもしれない。
新鮮な個性を持ったメンバーがtimeleszに入れば、それ自体が華にもなり、グループとしての見栄えもよくなりそうだ。反面、菊池自身が、センターの佐藤よりも目立ってしまい、ジャニー氏が想定していたはずのバランスを崩してしまっていた面もある。新生timeleszは、全体のバランスを慎重に見ていかなくてはいけなさそうだ。
また、タイプロエピソード1の終盤では、期待の持てる候補生に対して、アイドルとして磨かれていく変化を見たいと佐藤と松島が話していた。これはまさしく、「日本のアイドルは成長型」の典型だろう。
ただし本稿で見てきたように、旧ジャニーズアイドルの文脈上で求められる成長は、まるっきり未熟なところからの成長ではない。生まれつき「華」のある原石だという前提で、グループに貢献しながら、自分だけの個性を打ち出すという、かなりハードルの高い成長だ。
この成長を果たして、旧ジャニーズアイドルたちと互角に輝けるようになり、ジャニーズファンが納得する原石が、旧ジャニーズの外にもいるのだろうか。それとも大勢のファンが主張するように、元ジャニーズや、現ジャニーズジュニアの中にしか適任はいないのか。引き続き、オーディションの行方を見守りたい。
文:梁木みのり
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